ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」鑑賞してきた

新宿の「新宿シネマスクエアとうきゅう」で。一応ネタバレはなしで。新カット追加とシナリオ変更で作品の方向性をかなり変えてきたように思える。誰にでもすぐ判別できるのは、例えば「シナリオの明示」だろう。あるシーンで追加された碇ゲンドウと冬月の会話には、あるシーンが偶然ではなく、かなり作為的に、ほぼ必然に近い形で発生したことが示唆される。TV 放映版を観ただけでは決して得られなかった情報である。

他にも相違点を挙げれば枚挙に暇がない。そもそものシナリオ自体にも大幅変更が加えられるという話なので、思考を TV 版や劇場版とは切り離して鑑賞する必要がある。だが、明らかに TV・劇場版を意識してカットしている場面も少なくないため、聴衆側からしてみれば混乱しても仕方ない。逆に、何も知らない人間が観たら情報量の少なさに首をかしげるしかなくなる。一番素直に楽しむ(だけ)には、前世紀に公開されたバージョンを視聴したうえで、何も考えずに映画に身を任せることだ。

そして、多分それこそが作り手の意図なのではないかと思う。あれこれ考えずにまず楽しめ。身を任せろ。記憶の断片を引き出される感覚は、それが自分にとって楽しかったものであればあるほど快楽として作用する。これは非常に直接的だが、ある意味で回りくどい引用の方法だ。更にこの引用方法には、TV・劇場版では原典を別の作品に求めていたが、新劇場版では TV・劇場版に求めるという構造が成立しているという背景がある。大規模展開をみせた TV・劇場版が存在し、更にあらゆる論考・二次創作をはじめとしたある程度のレベルまで引き上がったコンテンツ基盤、それなりの年月という下積みがあったからこその引用論である。これは「続編」というスタンスでは成すことができない。パッと見はスッキリとしているようだが、その実はかなりトリッキーというか、ひねくれた状態にある。

じゃあそんな意図には従わないよ、という裏かき小僧も世には相当数存在するだろう。それをも見越している可能性だってあるし、そうであると考えたほうが自然だ。どこぞの男のように夕闇に立っていることもできるが、そうすると全体像がぼやける危険性がある。しかし、現状その他の可能性含めどうすればよいかなど明確にわかるはずもない。とりあえず、私は観賞中「ただ楽しむ」状態と「あれこれ考える」状態を行き来していた。それはそれでとても面白かったのである。どちらかといえば「夕闇」派に分類されるのだろうか。

本編ネタの中で一番引っ掛かったのは、やはりシンジの精神状態がかなりダウナー寄りに変更されているという点か。その影響をモロに受けているのが学園シーンの大幅カットだろう。他にもアッパーに作用するシーンは軒並み消されている。そして、最後の最後であのシーンが登場するが、表情ひとつ、タイミングひとつ変わればここまで変わるのかというぐらい、ニュアンスの相違が発生している。結局最後は感情のテンションが上がったままに終わった。

また、観ていてイライラさせられるぐらいにダメだったシンジが、どちらかといえば自然な恐怖を覚えている様子が目立った。この点については次回どうなるかで大分変わるだろう。

衝撃的だったラストシーン一歩手前のアレや、次回予告など話題に事欠かない。作画も含め見所満載なのは誰もの総意を得られるだろう。

2007-09-30

skkime 1.0 使用中

とりあえず MS-IME 2003 も引き続き利用できる状態にはしてある。最初は 1.5 を利用しようとしたが、どうにも buggy でやってられなくなったため、安定している 1.0 系にした。勿論この記述も skkime で書いている。

skkime って何やねん、という人のための補足は……とりあえず Wikipedia に skkime の大元となった SKK の項目があるので、そちらを参照。

SKK はコンピュータが苦手とする自然言語処理の、特に形態素解析を入力する側にわざと依存させることで、面倒な実装の大部分を省いた。副産物として非常に流動的に変化する日本語という言語に対し、単語さえ登録してしまえば流行語や変化した語彙などにもシームレスに対応できる。特に増大傾向にある片仮名語は、カタカナ入力モードにワンステップで切り替えることができる(しかもわかりやすい)ため、わざわざ辞書登録をせずともよい。どこで読んだかは失念したが、丁度筆記用具を用いて文字を記述するように文字入力ができるという例えがある。言われてみればその通りだ。平仮名、片仮名、英数字などはわざわざ一般的な IME に特有の「変換確定」を経ずともワンステップ入力を行える。まだ私自身入力にたどたどしさは残っている[1]が、それでも使っていて気持ちがいい。人間、何事も慣れだ。

この変更に伴い、xyzzy に導入していた skk マイナーモードとはお別れすることになった。あまり使い勝手がよろしくなかったため、すぐにお蔵入りにしてしまったものだ。

ひとつ注文をつけるなら、タスクバーへの最小化をもう少しきちんとサポートしてほしい。MS-IME と違い、アイコンが出ないのだ。ツールバーを再度出すにはレジストリ直接編集しか道がない。ツールバーそのものは小さくてよいのだが、しかし邪魔であることに変わりはない。

とりあえず、進化版の 1.5 に期待か。

脚註

  1. 例えるならば、GNU Emacs を使いはじめた時にキーバインドを頭の中でいちいち認識しながら入力していたあの感覚。慣れてくると、何も意識せずにコマンドを入力できるようになる。

2007-09-29

Apple から「iPhone 向け Web アプリケーションとコンテンツの最適化」なる文書が出た

Apple Developer Connection 内のコンテンツ。iPhone というデバイスがどのような特質を持ち、それをどのように生かして(または殺さないように)Web アプリケーションやコンテンツを構築したらよいかというノウハウの一端をざっと概説している。有用で、とっかかりとして用いるために必要なまとまりがきちんと感じられる。

先程「ざっと」という表現を使ったが、それは書き方の問題であって内容そのものではない。よく読むと、かなりの長いリファレンスになっていることがわかる。UA によっては、セクションごとに折りたたまれているようにみえる UI として表現されているためコンパクトな印象を受ける。だが全部を読もうとすると、これがなかなかに長い。特に Safari を起動した際の UI が持つ様々な要素については、実に豊富な情報が揃っている。特に顕著なのが「ページを読みやすくするために最適化する」というセクションだ。UA 文字列の書式に始まり、スタイルシートの指定法、iPhone Safari のメディアタイプ、ビューポートの詳細な画面仕様(ピクセル単位での解説)、テキスト・画像・フォームそれぞれのスタイルや情報配置で注意すべき点のノウハウ、果ては iPhone 用項目リスト(フィード用)の実装時に実装者に対して推奨される、フォント種・サイズ・位置などの統一デザインコンセプトまである。項目リストで角丸図形を利用する場合における様々な要件まで定義されている気合の入り具合いだ。デザインにはうるさいといわれる Apple のやりそうな細かさである。

但し、この文書はあくまでもどのような場合に iPhone での閲覧に適した Web サイトとなりうるかを示しているだけのものだ。この通りにガチガチのデザインに、つまり iPhone 専用スタイルをフルスクラッチで用意したり、文書構造を変えたりする「べき」かどうかまでは特に書かれていない。私としてはそんな依存性ありまくりのスタイルも文書構造も願い下げなので、iPhone という特定のデバイスのために「できることがあるならやってみる」ぐらいのスタンスでいこうと考えている。IE への対応と同じようなものだ。iPhone では「こうだったらもっといい」点があるならそれをパッチしてやればいい。

「Web 標準および実装済みのデザインプラクティスを使用する」に書かれている内容については、今更何かをどうこうということもない。こうするといいよ、という話が載っているだけである。

もう少し読んでから、何か書きたいことがあったら書き足す。とりあえずページで利用している JavaScript ライブラリは Prototype だったよ、というネタは最後に添えておく。

2007-09-27

Mozilla Firefox 2 ユーザは RSS 1.0, 2.0, Atom 1.0 全てのフィードをロケーションバーから任意に選択可能だった

Firefox ロケーションバーのフィードアイコン選択でリストが表示できている試してみたら大丈夫だった。RSS と Atom の数がそれぞれ m と n であった場合、m ≠ n であったためにメニュー表示が実行されているようだ(RSS 1.0 と 2.0 の type 属性値が同一)。というわけで Mozilla Firefox 2 ユーザなら問題なくどのフィードを購読するか(ライブブックマークとして登録するか etc.)選択できる。

個人的には Atom がお薦め。よりシンプルな要素種類(必要最小限の機能性)、人間が読んでもエスケープで汚くなっていないソースコード。もっと色々いじっているうちに趣旨変えするかもしれないが、現時点においては Atom が好き。

今日の読書:『ラヴクラフト全集 5』(H・P・ラヴクラフト 東京創元社)

ようやく読了。時間かかった……。1冊の本を読むためにこれほど時間を使ったのは初めてかも。実際は、読んだ総時間そのものはいつもどおりぐらいなのだ。ただ、そこに挟まる間が長かった。

内容はまあいつもの通りのラヴクラフト節。中でも『ダニッチの怪』と『レッド・フックの恐怖』はよかった。ちょっとこれはな……というのが『魔女の家の夢』。『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』がいちばん酷い。逆に、素晴らしいまでの熱気に満ちているのが『ナイアルラトホテップ』。『神殿』、『魔宴』、『魔犬』も小品ながら完成度は高い。玉石混交とはまさにこのことか。因みにショートショートや短編を前半に、後半に中編、中短編を持ってくるのが『ラヴクラフト全集』お決まりの編集スタイル。なるべく飽きがこないようにしたのだろう。ラヴクラフトの小説はその文体も手伝って一部の人間には睡魔を召喚する代物だ。ぐちゃまぜになっているよりはずっといい。

2007-09-25

RSS 2.0 フィード設置 & Atom 1.0 と RSS 2.0 で全文配信開始

まずは RSS 2.0 の出力に対応。そしてついに全文配信にも対応した。

RSS 2.0 生成時に文字化けていた問題は、XML::Feed を使う際、new する際に指定するフィード種類を 'RSS' にし、そこから 'Atom' に変換すると起こらなくなった。

全文配信は少し手間取ったが、とりあえず XPath と childNodes メソッドの組み合わせで解決。クラス属性値が date_stamp の要素を排除するのが意外と面倒だった。

相変わらず古いスクリプトで生成した RSS 1.0 形式も置いてある。こっちも更新してある。しかし、全文配信は行っていない。今のところ summary だけだ。今作成している方のツールで RSS 1.0 が生成できるようになれば、必然的に全文配信も可能になるだろう。

だが、どうにも XML::Feed は頭がカタいらしい。フィードをパースしてくる際は XML::RSS を利用しているため RSS 0.9、1.0、2.0 に対応している。しかし無から作り出す際には 2.0 固定なのだ。XML::RSS には途中から形式を変更したり、コンバートしたりできるインタフェイスがないため、XML::Feed の利用を諦めて XML::RSS レベルから書き始めないとどうやらダメなのだ。まったくもって不可解な設計だよ……。XML::Feed->new の引数を複数許可するなり、ハッシュにするなりしてバージョン指定に対応してくれればいいのに。やろうと思えばできる。

ハッ。これは、私に書き直せということか(言いだしっぺの法則)? 暇ができたらやってみてもいいかも。

2007-09-24

試験的に Atom 1.0 フィードを設置

前と同じ RSS 1.0 形式のフィードも引き続き提供している。ファイルは blog.atom。但し、Mozilla Firefox 2 シリーズでは仕様によりロケーションバーに出現するフィードアイコンを選択しても RSS 1.0 形式の方のみフィードとして表示しようとする。この辺の事情については詳しく記述された文書がある。因みに、「Space」スタイルのスタイル指定では右上に表示されるフィードアイコンについては RSS 1.0 形式のままにしてある。いくつも並べるとみっともないので。

次に述べるのは、いずれやりたいことのリスト。

ぶっちゃけた話、Perl の XML::Feed モジュールを使い、以前書いた mkrss を改造して mkfeed というスクリプトを書いている。しかし、例えば Atom 1.0 として生成したフィードを convert($format) メソッドにより変換しても、何故か文字が化けてしまうのだ。ちなみに用いているエンコーディングは UTF-8N。改行コードは LF。何でやねんと。

それから、XML::Feed のマニュアル[1]とコードを読む限りでは、RSS 1.0 のサポートはしているようだが……(中身的には生成を XML::RSS などに丸投げしているラッパー)。バージョン指定の方法がどうにも見つかっていないのが現状なのだ。$format には 'RSS''Atom' といった文字列を入れるのだが、これ以外は受け付けない。コードを読む限り、フィードを無から生成する場合に用いられる init_empty において、XML::RSSnew メソッドに渡す引数は version => '2.0' が固定で指定されている。他にどこかで変更できんのか。このままでは融通がきかないにも程があるぞ。もっとコードを読めということか……。

ま、最悪モジュールに直接手を加えてどーにかするしかないのだが。

脚註

  1. 非常に情報量が少ない。そのためコードを読む羽目になる。

2007-09-23

ドライバの奇跡 - 解像度 UP!

昨日の夜、ふと思い立ってビデオカードのドライバをアップデートしてみようと作業してみたら、思いがけない副作用で非常に嬉しい事態が発生してくれた。何と今まで 1024×768 でしか表示させられなかったモニタを、1280×1024 にさせることができるようになったのだ。これで一気に作業効率アップ。狭いなーと感じていたエディタの全画面を、より大きな環境で表示させられるようになった。これはかなりいい具合だ。ボロモニタの寿命も延びたというもの。

さて、ちょいとゲームでもやってみましょうかね。

2007-09-22

JavaScript の XMLHttpRequest で別ドメインサイトからデータを取得する云々

セキュリティの関係で、JavaScript ファイルをロードした側と同一ドメインからのデータ取得しかできない XMLHttpRequest。回避方法はいろいろあるが、今日はその中でも「同一ドメイン内で動作する CGI を経由する」方法を試した。CGI そのものは Perl で記述。簡易 Proxy みたいな感じ。やることは単純で、例えば HTTP 経由で GET したデータをそのまま出力するようなスクリプトを書くだけ。だが単純に取得したいデータの URI を渡して取ってこさせるだけだと、どんなものでも(例えば悪意ある改変が施されたデータ)持ってこれてしまうので、その辺に縛りをかける必要があったりする。なので、実際に組むとなるとエラー処理の方が長くなるという罠が。Perl はこの辺をどうにかするモジュールがたくさんあるから、HTTP::RequestLWP::UserAgent を使うだけで GET が送れる。持ってきたデータは CGI を使ったりして加工できるし、標準出力に print すれば出力はおしまい。短くしようとすればいくらでも可能。

別ドメインからデータを取ってくること自体の問題性は勿論議論すべき点だが、注意深くクラッキングの可能性を考慮しているならまだマシだろう。考えていない場合が一番危険なのだ。そこを突っ込んでいくと「無知は罪か?」という倫理論争に発展するわけで。

他にも別ドメインからデータを取ってくる方法はあるのだが(iframe を使うやり方、Flash を使うやり方など)、サーバ側にファイルを置いて実行できる環境があるならば、CGI による方法は何だかんだで手っ取り早かったりする。

今日の読書:『ぱにぽに 10』(氷川へきる SQUARE ENIX)

出たなー。勿論初回限定特装版で。10巻もこれまたかなりのカオスっぷりだ。

何度も反芻するほど楽しめるコンテンツは、やはり良い。

2007-09-20

RSS 生成用のスクリプトを書き直そうかな……

XML::LibXML を使ってみたから。これは便利だった……。XML::DOMXML::DOM2 よりも。さてそうは言ったものの、作り出すのはいつになるやら。

Perl いじってる時間は楽しいなぁ。

今日の読書:『さよなら絶望先生 第十集』(久米田康治 講談社)

絶望した! 色々な意味であざとさを演出しているネタに絶望した!

……内容はまあお察しください。

最近本を読む時間が減り続けている気がするなぁ……。何とか時間を捻出しなければ。

2007-09-18

Mozilla 24 アフターレポート

結局、16日の10:00近くまでベルサール九段会場に居た。US のセッションをずっと眺めていたたという感じ。以下、私の参加したセッション個別の状況などを。

出張 Shibuya.js 24 (18:30 - 20:30)

参加証がとれなかったので、モニタがあればそこで観ようと会場まで行った。会場で、多分無理かなと思いつつもスタッフの方に「参加証ないのですが、空きがあったりしますか?」と訊ねてみる。すると「あ、大丈夫ですよ」との返事が。これは予想外。いざ会場に入ってみると、かなりゆったりしたスペースどりがされていて、椅子の空きもそこそこあった。着席してプレゼンを見守る。

まず始まったのは「メイントーク」のセッション。

INSIDE Gecko

Gecko のレンダリングについて、そのデータ構造を中心とした話がなされた。個人的にびっくりだったのは、おおまかにわけて Gecko にはレンダリング用に3つのデータ構造が存在するということ。CSS の、例えば z-index などとの絡みもあり、単純に DOM ツリーを深さ優先探索でばしばしと解析するだけでは問題が発生してしまうのだ。

周囲の状況としては、あまり興味もないのかうたた寝をしやがるヤツがいる始末。面白いのに……。

AutoPagerize

Mozilla Firefox の拡張機能、AutoPagerize 開発者によるプレゼン。Wiki を用いたデータの管理を行っているという現状がクローズアップされた。個人的には、Wiki そのものにインタフェイスとデータベース両方の役目を負わせていると受け止めた。これから改良してほしいとなると、やはりインタフェイスとデータを分離して欲しいと思った。インタフェイスは Wiki のままでもよいが、拡張側からはデータベースを直接読みにいってほしい。データ収集専用の Wiki 開発の話が出たが、このへんの考えは盛り込まれたりするのだろうか。いずれにせよ今後に期待。

新世代ブラウザのクロス開発まとめ

インタフェイスが実装されているかどうかの話。知らなかったメソッドを紹介されるという意味合いでは参考になった。

JS の JS による JS のためのマルチスレッド

言語側ではシングルスレッドしかもたない JavaScript。それを言語自身によりどうにかしようという話。非同期通信によりデータを取得する際のオーバーヘッドが、マルチスレッド化されたコードを生成・管理・実行する際のオーバーヘッドよりも大きいならば非常に使い勝手の高い代物。要はプロファイラできちんとプロファイリングしてから使うかどうか決めろよ、ということだね。

マルチスレッドを実装するために JavaScript 自身を用いている点がひとつめのポイント。移植性は非常に高い。

利用するにはライブラリをロードし、メソッドを呼び出すだけという点がふたつめのポイント。これは楽だ。

中間コードを経て、最終コードを生成しそれを eval するというコンパイラそのものをライブラリ内部で実装してしまっている点がみっつめのポイント。この発想はインタプリタ型言語ならより実現可能性がアップする。JavaScript には eval がある時点で条件としては申し分ないのだ。

このセッションは計算機科学を齧っていない人間にとってはすこぶる退屈だったらしく、机に突っ伏しているヤツもちらほら。……おまいら(たぶん)プログラマだろ! セルフコンパイラの実装に関する話が飛び出した時点で喰い付けよ!

次に始まったのは、「ライトニングトーク」のセッション。時間がなくなったということで休憩をなくし、ぶっ続け。

ECMAScript 4 リファレンス実装

要は「先行実装」のおはなし。Standard ML の話が出てきて吹いた。昔いじったことがあるからだ。関数型言語のお手本みたいな代物だったと記憶している。Perl は Haskell によってバージョン6のリファレンス実装が行われている。その辺の話が飛び出したりして云々。

5分でわかる Photoshop の正しい使い方

最初は疑問に思っていたのだ。どうしてプレゼンを全画面にしないのかと。そうして気づいたのだ。起動しているのが Photoshop であることに。

衝撃はここからだった

そう。Photoshop をコマンドラインで制御していたのだ。無茶苦茶だと思った。何しろインパクトはバツグンだ。GUI で色々やるようになっている Photoshop に対し、真っ向から CUI で攻め込んでいる。会場(の一部)大盛り上がり。大喝采。CUI の素晴らしさを知っている人間がそれなりにいたことの証左だろう。いいものを見せてもらった。

jQuery つまみぐい

会場入りしてから資料をつくったらしい。これもまた無茶苦茶な話である。内容は jQuery の中で用いられている最適化の話がメイン。

SHA-1 の高速化 tips

暗号アルゴリズムを JavaScript で実装したとして、どのように高速化するんだよというネタ。Firefox は内部の int 系関数(詳細失念)が酷い実装らしく、その辺がボトルネックになってうまくいかないということ。しかしそこを書き直すとなるとかなーり汚いコードになるらしい。

JavaScript.GIF

GIF のバイト列に JavaScript のコードを埋め込んで実行できてしまうという話。これはある意味でセキュリティ的な脅威となりうるかも。だってドメイン越えが簡単にできてしまうのだ。

ドキッ!丸ごとウェブ!!ブラウザだらけの討論大会 ~チャットでユーザのポロリもあるよ~ (21:00 - 23:00)

そうそうたるメンバによる討論場。Microsoft の中の人は3人も出場していて、どれだけ力を入れているかを感じさせる。Opera 側は中の人が都合により出られず、ユーザ代表のみという形に。

ここに書き出すとキリがないので、個人的には記録動画うp希望というところ。……メモるだけだと全部把握しきれない。やはりノートパソコン欲しいなぁ。

LiveCoding@Mozilla 24 (23:30 - 03:00)

途中で顔を出したぐらい。はてなの Rimo の中の人による Rimo の基本をどう造るかという話もあってなかなか興味深かった。サーバ側で Perl により JSON 形式のデータ構造を作り出し、クライアント側で処理する話もあったり。Perl 使いとしてはなるほどと思わせられる話だった。その他にも色々あったがやはり書ききれない。割愛。

Mozilla が贈るゆる~い3時間 (23:30 - 03:00)

最後のビンゴ大会、リーチにすらならなかった……。ひどい。

カロリーメイトのポテト味が山のようになっていた軽食置き場が凄かった。ポテトだけというのは……販促だから仕方ないのか。おにぎりなどはすぐに消えた。個人的には駄菓子系が充実していてよかった。

喫煙所で煙草をふかしながら談話したりして、なかなか有意義な時間を過ごせたと思う。

Mozilla 24 U.S. Event (03:00 - 09:10)

アメリカで開催されたイベントの生中継。しかも同時通訳。凄いぞ。

いきなりしょっぱなのプレゼンテーターがかの有名なローレンス・レッシグ博士(Dr. Lawrence Lessig)でびっくり。『CODE』の著者といえばわかる人はいるはず。おおざっぱにまとめれば、再び人類の持つ「共有地」がロックされてしまうのではないかという話。人類の歴史を振り返り、共有地は度々ロック‐解除を繰り返してきたと述べる。今再びロックの脅威が迫っているとも。対抗するにはどうすればよいか。利用者自身がそれを許すからこそロックが発生する。故に許さないようにするべきだと。自覚しろ、ということなのかもしれない。これもまた動画がどこかに出てこないだろうか。

他にも Mozilla の中の人から「全ての技術を公にする必要はない」(意訳注意!)的な発言が出たり(つまり GPL3 には反対なのか?)と結構色々な話題が飛び出した。

いかんせん休憩がないまま数プレゼンぶっ続けなので、疲れる。後になるほど集中力が途切れてしまった。

全てが終わり、一服しようと思うとそこには朝日が。その時点で朝の9時をまわっていた。オフィス街の朝。日光が眩しかった。

帰宅した後は大爆睡してしまい、起きたのは17日のお昼近く。……あれ? 家に帰ったのが11時過ぎてたから、24時間近く経過してませんか?

……何だかんだで色々楽しめた1日でした。ちゃんちゃん。

2007-09-17

いざ往かん、Mozilla 24

そんなこんなで当日になったので。睡眠は十分。カフェイン錠と非常食も持った。アレと違って荷物は少なめでよいのがいいね。

いってきます。

2007-09-15

Mozilla 24 に行くことに

しました。家からもそれなりに近い「ベルサール九段」会場に。「出張 Shibuya.js 24」は満席だが動画配信するという話なので、モニタが設置されている可能性を見越して一応この時間から行ってみる。あとはずーっと。「Mozilla 24 U.S. Event」まで参加にした。某マーケットよりは楽なのでまあいいや。

最近はやるべきこと・やりたいことが多いな。よいことだ。

今日の読書:『地図にない町』(フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 NV)

そう。NV なのである。知っている人は知っているが、これは随分と昔に出た代物なので、まだ SF の方に収められていないのだ。それに、内容も SF というよりは怪奇小説にでも分類されがちなものが集められている。表題作でもある『地図にない町』はかなりの不気味具合を発揮した名品。まだ版元にあるかどうかはわからないが、一読しても損はないだろう。

2007-09-12

バージョン管理しててよかった - 自宅マシン上で大失敗

具体的には gresreg で失敗してファイルがどえらいことに。自宅のマシンでの出来事で本当によかった。まだコミットする前だったため svn update で事なきを得た。少し正規表現を修正して再トライ。今度は成功した。

まだ個人的には全然まったく使いこなせていないどころか、基本的な使用さえおぼついていないと思っている。しかしそうであったとしてもバージョン管理用のシステムを導入することはメリットが大きい。何より自分でアーカイブをせこせこと作る必要もないし、任意のバージョンまで自由に戻すことができる。diff も簡単。

明日も雨か……。洗濯物が……。

今日の読書:『らき☆すた 5』(美水かがみ 角川書店)

出てたんで。……アニメの方はまあ言わずもがなということで。本誌の方は読んでいないので単行本追っかけなのだが、おかーさんの話はこれがあったからなのかと。このタイプの本にしてはカラーページがやけに多いのは、表現的な理由もそうだが商業的な理由も大きいんだろうなと勝手に想像。

「絶対領域」という単語を見ると、改めて広く浸透してるんだなぁと再認識。ひと昔前までは「伺か」コミューンでしか通用しなかったのに。やはりまゆらの存在は偉大。何だかんだで超古参であった奈留もしっかりと装備していたのは、あまり指摘されていないのかもしれない。

2007-09-11

日曜日は神保町でお買い物 - アジモフの初期短編集 3 を入手

たまに出向けばよいこともある。『アシモフ初期短編集 3 母なる地球』(アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫 SF)を手に入れたのだ。これは嬉しい誤算。素晴らしいこともあるもんだ。

しかし、その前には絶望も味わった。どこぞの首吊教師じゃないけど。

絶望した! 五千円近くする『顔のない博物館』に絶望した!

いや、中身は『ウォー・ゲーム』『宇宙の操り人形』で全て補完できるのだが。こうね、ついつい手が出てしまって。でも、買ってないんだよ。財布の中身と相談した結果、そうなった。これを買ってしまうと今月の食費がどえらいことになる。既に財政はどえらいことになっているのだ。もう予断は許されない。それよりも他に価値のあるものを買うべきである。そこでアシモフ先生の著作となるわけだ。こちらはまだ「読んだことがない」。しかしディックの作品集は「読んだことがある」。この差は大きい。

ああディックよ。もう少し、もう少しだけ待ってておくれ。すぐに何とかするから……(そういってる間に誰かが買ってなくなる。いつものように)。

今日の読書:『アシモフ初期短編集 3 母なる地球』(アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫 SF)

これ以外の何を読めと? ……まだいっぱい積読ありますごめんなさい。

ともかくも興味深い作品が目白押しである。チオチモリン・シリーズの第一作『再昇華チオチモリンの吸時性』は抱腹絶倒大爆笑の偽論文。これはいい。後年のものは読んだことがあったが、初回作はこれがはじめて。表題作『母なる地球』は『鋼鉄都市』『はだかの太陽』『夜明けのロボット』などに連なると本人が認めている代物。『袋小路』はエセ心理学が信条の宗教勢力と血も涙もない典型的マッドサイエンティストが集う科学者集団を心優しきエイリアンと噛ませたあたりがもう。この作品はかーなり皮肉が満載なので、どちらかを「お前らバカじゃねーの」と笑ってしまったらその読者はもうアウト。アジモフ先生はどちらも愚かしい存在に仕立て上げているのだ。無神論者でありながら聖書の解説本を書いたりするアジモフ先生ならではの「科学的」視点が素晴らしい一品。……無論、気づかれなければそれで終ってしまうのだが、比較的わかりやすくしてある上に皮肉の加え方も絶妙。嫌味たらしくない。

巻末には初期作品一覧の初出が一覧になっている。これは掲載紙、号、原題、邦題が一同に集っており、資料的な価値がかなり高い。

2007-09-10

当サイトのファイルエンコーディングが UTF-8 になりました

具体的には XHTML / CSS / JavaScript ファイル。IE6 用の対策[1]も行っているため一応文字化けしないで見れるはず。滅茶苦茶久しぶりに更新履歴を書き換えた。

今まで任意のファイルをまとめて変換する方法が手元になかったのでめんどくさくてやっていなかったという体たらく。だって nkf は再帰もしなければワイルドカード(or 正規表現)も使えない[2]。それ以前に、エンコーディングを変えようという発想自体忘れていた。最近ようやく思い出したという次第。

今回じゃあいっちょ作業しますかと思うに至ったのは xyzzy 用の「 指定ディレクトリ内のファイル文字/改行コードを一気に変換」コード断片を見つけたから。ワイルドカードも使えれば再帰もお手の物。こりゃいいやと導入した次第。あとは gresregXML 宣言やら何やらに書かれている euc-jp を UTF-8 に変えた。勿論 CSS の @charset も忘れずに。

今日は他にも神保町で収穫があったのだが、ひとまずのところ明日にまわす。

今日の読書:『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 2 善意の指針は悪意』(入間人間 電撃文庫)

続編出ちゃったよ。今作は前作よりかはバランスがよくなっている感じがある。冗長で大仰なみーくんの弁舌は相変わらずだが、量が減っている。登場人物たちも総じてどこかぶっ壊れているのがよろしい。そんな中、新キャラ準ヒロイン扱いの長瀬がメインの存在を喰っちまうのではないかと思っていても、やはりそこはまーちゃん、しっかりといい感じのヤンデレ具合を放出し、見事に登場回数とインパクトのバランスをとり続けた。構成的には前作を読んでいないと何が何やらといった状態になっているが、まあ色々と込み入った事情のある二人なので仕方がない。

惜しむらくは少々オチばらしの展開にミステリ要素が少ないことか。かなりファンタジックというか、ご都合主義展開が介入してしまっている。そこは頭の痛いところであったが、全体的にはよくまとまっていると思うのでパラパラとめくる分には問題はない。ミステリと呼ばれるものが読みたければ、自分がそうだと思うものを読めばいいのだ。

脚註

  1. 具体的には条件付コメントを利用した meta 要素の利用。http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=UTF-8"。主題とはズレるが、本当は application/xhtml+xml にしたいものの IE6 & 7 のせいで未だにこのまま。
  2. ラッパー書いてやればいいじゃないかと思って Perl でシコシコと書き始めてはいた。でもやめた。詳細は本文にて。

2007-09-09

情報処理技術者試験の体系構成が変わる

スラッシュドット経由。変わるのは体系だけなのだろうか。問題にも手を加える可能性がある。現行の「基本情報技術者試験」より上はかなり変わるので当然そうなるだろうと予想されるが、基本情報そのものはあまり位置づけが変わっていない。下にひとつ試験が新設されるだけである。

基本情報の過去問を解いたことがあるのだが、アレは午前中試験がほぼ暗記(計算問題もあるにはある)という嫌らしいものだった。要するに過去問やって傾向掴んで類似問題解いていればいいだけの話。うわこいつ何キザったらしいこといってんだという批判を承知で言えば、「理解」ではなく「知識」だけを問うものだった。試験の性質が単なる知識(というより記憶?)だけを問うものならそれはそれでピッタリなのだが……。応用もなにもあったもんじゃないのは事実。午後は多少まともになる。ソースコードを読むのだ。……紙の上で。読みづらいことこの上ないが、中身は結構単純だったりする。午後問題の方がまだ好きになれるという人は結構多いのではなかろうか。

今日の読書:『からくりアンモラル』(森奈津子 ハヤカワ文庫 JA)

少し前に出ていたのだが、既にJコレクション版を持っていたのでいいやと買っていなかったもの。偶然文庫版を書店で見かけて手にとってみたら、何とJコレ版に比べて1篇追加されているではないか。しまったやられたと思い購入。因みに新たに追加されたのは『繰り返される初夜の物語』。娼館で働く娘カナと彼女を買ったマサヤが織り成す寂しい物語である。あまり詳しく書くとネタばれになるため詳細は割愛するが、他の収録作品同様 SF 的ガジェットをうまく利用した一品に仕上がっているとだけは言っておこう。

因みに収録作は性愛をかなーりストレートに描いているので好みの分かれ方は激しいだろう。SF に SEX を持ち込めないのは既に大昔の話。気負わずに読めばいいだけのことである。

2007-09-08

メーラ Eudora の起動は要注意! 無断で Mozilla Thunderbird のデフォルトプロファイルを使ってしまう問題アリ

メーラの Eudora 8.0.0b1 がリリースされた。だが導入の際、Mozilla Thunderbird を入れている人はくれぐれも注意。Mozilla Thunderbird の設定データを何も言わずに流用する挙句に、設定を強制変更させられるからだ。すぐにそれとわかるのがスレッド一覧のソート用ボタン。「件名」「送信者」などと書かれているあのボタン群のことだ。ここの配置を Eudora 文化にあわせてしまう。すると、Mozilla Thunderbird を起動した時に設定が変更されっぱなしになっている。

解決策は簡単だ。新しいプロファイルを作り、それを Eudora 用にすればよい。起動時に -P オプションをつけてプロファイルを指定すればいいだけだ。Windows ならショートカットを使うだけのこと。

それにしても初っ端から酷い仕打ちだった……勿論それで文句を言ってもはじまらない。ベータ版なのだから。自己責任。だから自分で何とかした。他にも色々と設定を変えられていたので自己修復した。勿論バージョンアップに伴いこれらの問題は解決してゆくだろう。Eudora 用のプロファイルディレクトリが自動生成されるようになるのは目に見えている。ただ、まだ安定しない時期の代物なので導入してみたい人は注意。

さて、肝心の Eudora 8.0.0b1。中身ははっきり言ってカスタム版 Mozilla Thunderbird そのもの。Mozilla Firefox に対する Netscape Navigator 9シリーズのようなものだと思えばよいだろう。Eudora というブランドを利用したマーケティング用ソフトウェアといえる。無論、Thunderbird にはない様々な機能が追加されているというが、ぶっちゃけた話そこまで使い込んでいないし元々 Eudora ユーザでもなかったのでコメントできる状態にない。

暇があればいじってみようかな。

今日の読書:『今日の早川さん』(coco 早川書房)

今日は何といってもコレ。だって発売日だったから。

今日の早川さん』(作品一覧)は元来 Web コミックと俗称される種類のマンガ作品である。現在も当然ながら更新継続中だし、物語は紡がれ続けていくだろう。

そしてこの作品最大の特徴が、何といってもである。

メインキャラクターの早川さんは大の SF & ファンタジーマニア。その取り巻きの方々もこれまた濃い。そんな読書狂ビブリオマニアたちが繰り広げる、特に SF 者にとっては「あーこれあるある」というネタ満載のマンガなのだ。面白くないわけがない。サイトにあがっている分はとっくの昔に全て読ませていただいたし、まさか早川書房で単行本化するとは。早川書房は本当に空気が読めている。実に素晴らしい。

無論、他の要素も色々と詰まっている。それは……まあ読んでもらえればわかるかと。「読書狂」といったが程度に差はあるし、笑いのとり方がそのネタだけで完結しておらず、他の笑いとの複合要素になっているからそれほど SF 者やホラー者や文学モノやラノベ者でなくとも楽しめる。最低限の素養は必要だが、まあそれはこういった作品を読むか読まないかという時点ですでにフィルタリングされるので問題はないだろう。

それにしても、やはり早川さんの思考回路とはある程度シンクロしてしまう部分がある。いきなり初っ端から彼氏(候補)に『啓示空間』(アレステア・レナルズ ハヤカワ文庫 SF)を薦めるあたりぶっ飛びすぎで笑うしかないが、他人に自分の好きな本を読んでもらいたいという欲望は確かに本に親しむ誰しもが持っている感情であると思う。学生時代に私もクラスメイトに「何か面白そーな本貸してよ」と言われたのでさんざっぱら悩み抜いた挙句、無難かつありきたりなところで『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 SF)を貸した覚えがある。当時は蔵書も今より少ないこともチョイスの難しさに拍車をかけていた。さすがに『ヴァリス』はやりすぎだし、『われはロボット』(アイザック・アジモフ ハヤカワ文庫 SF)あたりでもよかったのだがそれでもあんまりだと考え直して、しかし『ユービック』や『流れよわが涙、と警官は言った』もまた微妙なラインであり、『異星の客』(ロバート・A・ハインライン 創元 SF 文庫)は長さ的にもテーマ的にも絶対却下。さてそうなるとやはりここは超有名作品に出張ってもらおうとしたわけだ。

結果は「よくわかんなかった」。つまり惨敗である。……やはりアジモフ先生の本にすればよかったのか。そんな話もありましたとさ。

因みに途中で大爆笑したのが17ページの「うんちくたれ」(引用内強調筆者)。

SF 者の前で SF 映画の話をすると大変なことになります

『今日の早川さん』P27

まさにその通り。この話は長くなるのである程度端折るが、少なくともディック作品が大好きな私にとって、映画化された彼の作品を観る度に失望したものだった。近年は特に酷いといっていいだろう[1]

絵柄は好みが分かれるところかもしれないが、SF 者は必ず買うべし。自分の生態を把握できる。

因みに、coco さんが描いてる別の作品「異形の群れ」も面白い。こっちはクトゥルフ神話(クトゥルー、クルクルウ etc.)に出てくる数々の神々(化け物ともいう)をデフォルメしていい具合に毒を盛り込んだもの。

脚註

  1. 勿論、『スキャナー・ダークリー』というかなりよい出来栄えの良作もある。こいつは万人にお薦めできる。まずその映像に酔い、結末のあっけなさに呆然としてほしい。少々オチの演出が弱すぎるという致命的弱点もあるが、そもそもディックの原作とほぼ同じだから難しい問題だ。今度『ゴールデン・マン』という作品を下地にした『Next』が公開されるようだが、これは全く期待できなさそう。どうやらガチのアクションものらしいから。ディックの作品をアクションに仕立てると、よほどうまくバランスをとらない限りプロットと映像が遊離してしまうのだ。アクションが全てをぶち壊した、ディック原作の映画でも最低最悪の出来栄えを誇る例は『ペイチェック』だ。そもそもジョン・ウーを起用したこと自体が全ての原因である。彼はアクションを撮らせたら素晴らしい作品を作るが、SF を撮らせたら凄まじい駄作を作るのだ。緊張感のないプロット、無意味なアクション、何故かカンフーが使えるひ弱そうな科学者。最早ここまでくるとギャグである。映画館では爆笑をこらえるのに必死だった。カタルシスに欠け、何よりその結末がまるっきり逆になっていることから賛否両論を呼んだ『マイノリティ・リポート』は意外にもバランスそのものはとれており遊離を見せていなかった。ただ、世界そのものが安定してしまっているためにディックの影がまるでない作品になってしまっている。「黒き鉄の牢獄」を「白き硝子の要塞」にしたようなものだ。『トータル・リコール』もなかなかどうしてきちんと楽しんで観られるB級映画になっていた。笑いの要素も特にはずしているとはいえない。私が気に入っているのは、ダグが火星に行き歓楽街でミュータントの女の子に占いをしてもらい、頭を優しく撫でているシーン。皮膚のせいで凄まじい形相になってしまった子を普通に受け入れている感覚は、ディックらしい感覚に溢れていると思う。全体的なプロットは荒唐無稽かつアクション満載いつものハリウッドだが、ヴァーホーヴェンが監督しただけあってやりすぎにはなっていない。個人的には結構好きだ。『スクリーマーズ』はとても原作に忠実。ただ設定(敵)変更の影響でエッセンスは薄くならざるをえなくなった。映像の方は期待しない方がいいが、脚本がかなりよいので私はそれほど気にならなかった。『クローン』は内容を少々ロマンス寄りにしすぎたためか「自己中心的な」面がごっそりと抜け落ちているのが悔やまれる。それを除けば出来はいい。オチも一ひねりしてある。ただいかんせん邦題が酷すぎる。「にせもの」でいいじゃないか。『バルジョーでいこう!』は観たことがない……。観たいな。最後はやはり『ブレードランナー』だろう。これは……既にディックの作品ではない。リドリー・スコットの独壇場、別の次元の発想が生きている場である。逆にこう料理された上に出来栄えがいいと何もいえなくなるものだ。無論しっかりとディックのエッセンス(感情移入!)が残されており、物語に深みを与えている。……結局長くなったなおい。

2007-09-07

iPod シリーズ新製品「iPod touch」が発表される

iPod シリーズに新顔が。かなりの部分で iPhone に似た代物であることには違いない新製品 iPod touch を筆頭に、nanoshuffle無印(classic)にもデバイスバージョンアップが施された。個人的には iPod touch をいじってみたい。とはいうものの音楽云々の話ではなく、その内部にあるソフトウェアのことだ。少なくともここ日本においては iPhone より入手が容易なのは確実。iPhone と同じ Mac OS X ベースの OS を搭載しているなら尚のことだ。但し、何をどうしたいかという具体的構想はない。ただいじるだけ。Hack とは到底いえないような戯れでよいのだ。

関連するネタでは、Apple の株価が iPhone の値下げ発表で急落したという話題がある。ニュース記事によれば iPod などのシリーズについて機能、デザイン、価格の変更を発表するなか iPhone を値下げした点が「iPhone の弱み」と投資家に受け止められたからだという。……そんなもんなのかね。

今日の読書:『刀語 第九話 王刀・鋸』(西尾維新 講談社 BOX)

……まずカラー扉絵。これ、とがめはいてな(ry

えふんえふん。えー、内容はまあ何というかいつもながら無茶苦茶な展開ですな。王道もしっかり踏襲しているけれども。本当にまにわにかわいそうな子たち。イラストの効果も絶大なのだろう。嘆かわしいぐらいに――まあいいか。

明らかにページを稼いでいるとしかいえないスカスカ文字量はいつものこととしても、まさか最後でああいう展開になろうとは。該当箇所、一度読んだだけでは何がなんだかという人も結構いるのではなかろうか。ちょいとネタばれかもしれないが、『マルドゥック・スクランブル』(冲方丁 ハヤカワ文庫 JA)のカジノシーンが脳裏に浮かんでしまった。それでもアレとは別の意味合い・流れだ。連想しただけの話である(何という短絡的な私の思考回路!)。

戦いの前にはあーんなことがあったりしてもう何というか本当にイラスト自重。いきなり見開きでくるなんて卑怯だ。横暴だ。勿論いっぱいいっぱい感というか、作者のヤケクソ感が(ある程度意図的だと思われるが)漂ってくるところが結構好きになれてしまう私って、もう毒されているのだろうか。

ああ、そういえば『ひぐらしのなく頃に 第一話~鬼隠し編~』(竜騎士07 講談社 BOX)も出てたんだっけ。『今日の早川さん』(coco 早川書房)も。早速明日買いにいかねば……って、台風が近づいているのだった。学生時代にはあれほど待ち焦がれていたのに、こんな時に限ってやってくるなんて。台風のバカ。

2007-09-06

Microsoft の Silverlight 1.0 がリリースされていた

4日にリリースされてた。要は Flash の対抗馬。但し、.NET の思想が根底にあるため開発可能言語は .NET で使えるものといった趣き。JavaScript (JScript?) は勿論のこと、Perl (PerlScript) その他言語も使えるようだ。C# もそのひとつ。

誰が言ったか忘れてしまったが、Microsoft が本当に凄いところは「あれだけ大規模な組織で大規模なソフトウェアを(質はどうあれ)開発できていること」だという話を見聞きした覚えがある(ど忘れしてしまった……誰が言ったんだっけ? 情報求ム)。Netscape Navigator に対する IE の話はともかくとして、ODF には OOXML[1]、PDF には XPS、そして今回は Flash に Silverlight である。Adobe に対する攻勢? という話はさておくとしても、対抗馬(最低でも二番煎じになるレベルの代物、よいものが出るときはすごいことに)を出せているのは確かに恐ろしい。ただし、戦略が成功すればいいが失敗したときは目もあてられない。やはりリスクは大きいのだろうか。資金的体力があることは勿論だが、こういった対決図式を演出することにかけて Microsoft には力を注ぐ社風があるのだろうか。

現状はわからないが、少し前には「ハロウィーン文書」が話題になった。これは GNU/Linux のサーバ市場躍進に伴い Microsoft 社内で作成された戦略文書だ。オープンソフトをはっきり脅威として認識したうえで、どうやってそれを自分たちも見習うべきか、そしてどうやってこの動きをつぶせばいいかについて、詳細な見当と提言が行われている。「プロトコルの脱共有化」など、発想そのものはある意味突飛だが、それを笑い飛ばせない影響力を確かに持っている会社である上に、検討と提言もまたある程度適切であったから大問題になった。訳者の山形氏はこの文書について次のように述べている。

この文書はある意味で、すばらしい文書だ。この文書はちゃんと戦略というものを明文化し、それを組織的に共有しようという明確な意志があらわれている。そしてそれにはちゃんと実効性があり、(少なくともこの組織にとっては)きわめて有益な代物となっている。

  • 社内的なご機嫌うかがいや遠慮が一切ないこと。(後略)
  • つまらない道徳的な判断がまったくないこと。(後略)
  • つまらんプライドにとらわれないこと。(後略)

The Halloween Document: Japanese

それこそが Microsoft が持っている力なのではないか、という分析だ。その視点には今のところ同意する。この考え方が根底にある製品戦略のひとつが対決図式というわけか。

正直、Silverlight の将来性については詳細を知らないので何ともいえない。だがユーザ側・製作者側が Silverlight で何らかのアプリケーションを利用・開発する動機が生まれるならば突破口は開かれる。さすがに Netscape 社の時と同じ方法では拡大は難しいだろう。バンドル[2]にしても、Media Player の同梱問題で分離バージョンが販売されるに至っている歴史がある。

……ますますわからなくなってきたな。これからどうくるかが大事か(結局その結論かよというツッコミはアリ)。

今日の読書:『ラヴクラフト全集 4』(H・P・ラヴクラフト 創元推理文庫)

まず何といっても『狂気の山脈にて』。ラヴクラフト・ワールドのかなりの部位が惜しげもなく疲労されている素晴らしいまとめ作品。恐怖の描写もなかなかのもの。最後の締めを性急にしすぎた感はあるが、落ち着いた語り部の筆致が逆に背筋に寒気を催させる。

さて次は5か。読むものが尽きないのは素晴らしい。

脚註

  1. つい先日OOXML の ISO 標準化が一旦否決されたというニュースがあった。但し 来年2月に開かれる会議(Ballot Resolution Meeting)で、今回条件付き反対票を投じた国のいくつかが賛成に回れば、OOXMLはISO標準となるとのこと。因みに ODF は ISO/IEC 26300 として認定済。
  2. バンドル戦略は効果的だと思う。個人的主観による経験では、コンピュータを利用する人間の中でもカスタマイズに興味を持てないタイプの人は、「あるものをそのまま使い続ける」傾向が強い。IE 然り、Media Player 然り、Outlook Express 然り。他のソフトをあの手この手で薦めてみても、「めんどくさい」「今でもつかえてる」「何でわざわざ」といった意見が大半を占めていた。

2007-09-05

Opera 7.5 Alpha Released & Mozilla Firefox Nightly Build も色々と話題に

ついにリリースと相成った。まあ自マシンに入れるとしてもテスト目的だし、現在 Opera は常用 UA ではない。公式な Changelog が一番詳しい。インタフェイス重視の相違点 etc. は Kuruma 氏が既にまとめている(早!)。

Mozilla Firefox もまた Nightly Build が熱い。090318(つまり9月3日の18時版)では Another 朝顔日記で既報のように、SSL を使ったセキュアな方法でアップデートを行うようになっていない拡張機能はすべて無効になる追加機能が Checkin されて反映された。Piro 氏もコメントを出している。その他の主だった機能変更・追加に関してはえむもじらの記事がよくまとまっている。UI 面ではロケーションバー近辺の機能変更が嬉しいところ。拡張機能 Locationbar2 の便利さは身をもって感じているからだ。ただ、どこまで拡張機能の内容を実装していくかでゴタゴタしているようだが……。どんぴしゃりの該当 Bugzilla は Bug 366797。コメントの多さが議論の活発さを物語っている。尚、レンダリング面ではついに Firefox 3 シリーズで Acid2 に対応。Gran Paradiso Alpha 1 の頃のような重さ & 解釈違いもとうの昔に消え去り、安定かつ高速になった(Cairo の採用による諸々)。0.x 時代の Nightly を思い出す。Stable より Nightly の方が安定していたっけ。今の Gran Paradiso (Gecko 1.9 系)はどうかなぁ。Nightly を常用しているわけではないので体感はできていない。Acid2 に関しては確かに CSS の解釈対応度合いをチェックする意味合いの代物だが、あまりにもトリッキーなことをやっていたりそれはいかがなものか的なスタイル指定があるという噂を昔どこかで目にしたことがある(ソース失念)。全面的に「信用」というわけにはいかないのだろう。

色々といじりたいが今日は眠いので明日から。さて、寝るか。

今日の読書:『情報環境論集』(東浩紀 講談社 BOX)

読み終わり。『文学環境論集』同様ボリュームがあり、読み応えがあった。所収の「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」はちょいと散逸した文脈が玉に瑕だった(私はもっと散逸した文章を書くので人のことはいえないのだが)。ディックの(主に)後期の作品、とりわけ『ヴァリス』を度々持ち出してきて足掛かりにしているのは驚いたが、本人が『フィリップ・K・ディック・リポート』(早川書房編集部編 ハヤカワ文庫 SF)所収の「神はどこにいるのか:断章」でも述べているように、2002年の時点でもまだ現実の書き手としての筆者には、いまだ、そのような本格的な批評を書く準備ができていないという。1997~2000年時点での「サイバースペース」はあくまでもサイバースペースという概念を捉える足掛かりであった(主題であった)から、ディック論は当然本論ではない。だがバランスを欠いているかのごとく頻繁にディックの長編を採り上げている。

「情報自由論」は著者がプログラマではないためそっち方面の記述に若干怪しいところも含まれてはいるが、比較的高品質の情報と理解を基にしているので安心して読むことができる。個人的には RMS の思想面記述がほとんどない点に違和感を覚えたが、どう考えても私自身の感情がバイアスをかけているので落ち着いてから整理しないとダメだ。それを抜きにして、あくまでもプログラマとしての視点から読んだ場合、引っかかる部分がちょいちょいとあったのは事実である。もう少し読み直してから断片的にしろ何にしろ文書にでもできたらいいなぁ。ただのアラ探しはしたくないので。

『S-F マガジン』連載中のアレも絡めてみたかったが時間ないんでおしまい。

2007-09-04

ひょんなことから『ラヴクラフト全集』をすべて入手

いままで3まで買ってしまったのは無駄だったのか……。まあいいや。1から6までがすべて揃ってしまい、今現在かなりウハウハな状態だ。ちなみに入手ルートはウチの親父。以前からオカルト、オーパーツ、UFO などが好きだっていうことは知っていたが[1]、まさかラヴクラフトの話を振ってみたらいきなりドナルド・タイスン版の『ネクロノミコン アルハザードの放浪』(学習研究社)を持って現れるとは思わなかった。流石だ。ただしまだジョージ・ヘイ版『魔道書ネクロノミコン 完全版』(学習研究社)は持っていないとのこと。今度貸そうかしらん。

そうして今まさに『ラヴクラフト全集 4』を読んでいる真っ最中。相変わらずの文体ももう慣れた。オチの読みやすさも相変わらず。しかし問題は語り部の語る内容そのものにあるのだ。ディックの作品を「プロットが無茶苦茶だ」といって切り捨てるのが愚かしいことこの上ないことであるように、ラヴクラフトの作品もまた一部の欠点だけを見て非難するべきではない。ラヴクラフト自身が感じとっていた「恐怖」を追体験することそのものに、エンタテインメント性があるのだから。

今日の読書:『ウニバーサル・スタジオ』(北野勇作 ハヤカワ文庫 JA)

抱腹絶倒の間違いまくりな大阪の風景がこれでもかと描写されている様子は圧巻。これは面白い。また、「テーマパーク」という括りを設けてあることからも薄々感じられるように、北野氏がそれまでに著してきた書籍に登場する世界の「断片」をネタとして仕込み、更にメタ的な視点を導入して入れ子構造を作り上げてしまっている。これは、いわゆるキャラクターの「スターシステム」の物語世界版であるといえるだろう。敢えて言葉にしてしまえば「断片世界のスターシステム」といったところか。無論、入れ子にしすぎてわけがわからなくなるようなことにはなっていない。あくまでも「ウニバーサル・スタジオ」という世界をメタ視点1として、その他断片世界を俯瞰させている。更にその上にもうひとつの視点を儲け(メタ視点2)、ぼやけがちな「ウニバーサル・スタジオ」という舞台の輪郭をくっきりと浮かび上がらせている。

ちょっと物足りなさもある紙幅ではあるものの、内容はかなり濃く、楽しめる。『かめくん』その他の北野ワールドを堪能してから読むと、とてもいい具合に笑いが倍増。個人的には、カーネルサンダースのくだりがもうおかしくてたまらなかった。

脚註

  1. 中学生だったころの私に『神々の指紋 上・下』(グラハム・ハンコック 小学館)を「あげる」って寄越した過去がある。この『神々の指紋』、トンデモ本だといって非難する向きもあるが、上巻に関してのみネタとしてはいい具合にまとまっていると思う。下巻は少々情報が散逸しすぎの感が否めないが。どこぞの異性人が居候している家庭の弟クンみたいに、「信じる」のではなく「楽しむ」ために消費するスタンスで読むと Good なのだ。

2007-09-02